工学の道を目指す理系高校生への進学アドバイス
この記事では、普通科高校の学生が理系分野を選択して以降、大学の工学部の道に進むとき・進んだ後の進路と、考えておくべきことについて解説します。
一般的な普通科高校(進学校)の場合、高校に進学して1年目か、あるいは入学してすぐ、理系か文系のどちらを選択するか聞かれます。「まだ合格して進学したばかりなのに…。」と思っている時期に、進路調査が突然来ます。そのときに「何も考えてなかった。」ということがないようにしておかなければいけません。
筆者もまた、普通科の進学校へ進んで理系を選択し、工学の道を歩むために大学・大学院まで進学しました。そして、就職活動の結果、核融合の研究職に就いたという経歴があります。しかし、学生のうちから知っておけば苦労しなかったなと思ったことはたくさんあります。進路のことで家族と意見をぶつけあったこともありましたが、進路のことについて事前によく知っておけば、要らぬケンカだったなと思うこともありました。その経験から、理系の特に工学系の進路について、高校生のうちから知っておくといいこと、考えておくべきことをお話したいと思います。
なお、この記事は大事な将来についてのことなので、ご家族と一緒に読んでもらえるといいと思います。
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理系・文系のどちらに進むか
冒頭でもお話したように、普通科高校に入学してすぐか暫くすると、今後は理系の道を選択するか、文系を選択するかを決めなければいけません。
この理系・文系の選択が違うだけで、将来就く仕事に大きく影響します。そして、一度方向を決めてしまうと、後で簡単には文系から理系への変更、理系から文系から転向はできません。そのため、実はこの段階で、将来の進路の方向性についてある程度考えておかなければいけません。
高校で理系学生が修得する科目
学ぶ教科は、文系と理系で異なります。特に進学高校の理系に進むと、物理・化学・生物のうち、化学と物理か、化学と生物の組み合わせで学ぶ科目を選ぶのが一般的です。
工学の道を進みたい場合、一般的には物理と化学の組み合わせを履修します。
なお、医学部などの難関学部に進むとなると、大学受験のために物理・化学・生物のすべての科目を勉強しなければならない場合もあります。
また、工学の特殊なケースでは、大学で「生物工学」というものを学べる所もあります。生物工学の場合、当然生物の知識も必要になってくるわけですが、だからと言って高校のうちに物・化・生をすべて頑張って勉強する必要はなく、大学に進学してから生物を勉強すればよいので、まずは大学受験を乗り切りましょう。
理系大学で「工学」を学ぶ場合の選択肢
大学で「工学」を学びたい場合は、大学受験の際に進路先として「工学部」を選択するのが一般的です。(ただし、情報通信分野などは、工学部以外でも学べる学校が多い。)
工学部には多種多様な学科(つまり専門コース)があります。学校の保有する設備の違いや提携研究機関との違いによって、特色ある学科を設定しているところもあります。
一方で、全国の大学で比較的設置数が多い学科もあります。それは、主に、次のような学科です。
- 機械学科
- 電気・電子学科
- 材料工学科
- 情報通信
- 建築・土木工学
こういった学科は、企業に就職してからの知識の汎用性があるので、工業系の多くの企業で採用募集がかかる傾向にあります。つまり、全国の大学で比較的設置数が多い学科は、就職活動時に多くの企業へ申し込み安いので、就職という観点からは強いと言えるでしょう。
だからと言って、あまり聞きなれない学科はオススメしないというわけではありません。既に学びたいことの興味や、将来の仕事でこんなことをしたいという方向性が決まっているのであれば、それを学べる学科を選ぶべきです。筆者の場合、エネルギー工学を学べる学科で学んできました。
大学を受験する前に考えておかなければいけないこと
大学受験生は、どの「大学」のどの「学部・学科」で学びたいのか、受験時に選択しなければいけません。そのため、高校3年生で受験勉強が本格化する前に、大まかにでもいいので決めておきましょう。
どの「大学」に入るかに関しては、難関大学であればよりレベルの高い内容を学んでいくことができますし、就職においても有利になるケースが多いのは間違いありません。一方で、学力レベルがかけ離れているところを狙ってしまうと、一発合格が難しいこともあります。
それを避けるためには、模試を繰り返し受けましょう。自分の学力レベルがどのあたりにあるか、そして自分が狙う大学の合否可能性はどのくらいかを、高校3年生の初めから受験直前まで、定期的な模試で把握することにより、一発合格の可能性を高めることができます。もちろん、受験慣れにも効果があります。
学びたい「学科」はどう探せばよいのか
学科の探し方についてですが、学生その人によって探し方が変わってきます。ここでは、大きく次の①・②の2通りの状況に分けて解説します。
- 大人になってやりたいことが定まっていない場合
- 将来やりたいことが定まっている場合
① やりたいことが定まっていない場合
大学を選ぶ時点で、まだやりたいことが定まっていない子も多いので、恥じることではありません。大学に入ってから考えても問題ありません。筆者もまた、核融合に携わりたいと思ったのは、大学1年のときに受けた授業がきっかけでした。
大学に入ってから考える場合は、将来の選択肢ができるだけ広がるように、先ほど紹介した全国的に設置数が多い学科を選択しておくとよいでしょう。それらは、主に、「機械学科」「電気・電子学科」「材料工学科」「情報通信」「建築・土木工学」などです。
とはいえ、この5つの学科だけ見ても、学ぶ内容は全然異なります。そこで、自分が今興味があるのは何なのか。自動車なのかパソコンなのか、建物なのかなど、そういったことは日常から意識して、考えるようにしましょう。そして、自分の興味と方向性が合う学科は何なのかを、様々な大学のホームページなどを参考に調べてみましょう。
② 将来やりたいことが定まっている場合
将来やりたいことが定まっている場合は、そのやりたいことが、どの大学で研究などが行われているかを、インターネット検索で調べてみましょう。
また、企業で開発が行われている場合は、その企業が提携している大学を探してみるのもいいですね。
探し方としては、そのやりたいことについてGoogleなどで検索してみて、出てきたニュースを色々と読んでみる。そして、関わっている企業名や大学名が分かったら、ホームページを見に行ってみるといった順番です。また、本屋の雑誌から会社名や大学名を探すのもいいですね。
また、工業専門の新聞も幾つか世の中には出回っていて、どんな企業や大学が何をやっているのか、よくわかる時事情報を手に入れることができます。こちらも非常に有益な情報が得られます。
あとは、その大学のどの学科が、その自分のやりたいことと繋がっているかを調べるのです。研究室の名前などが出てきたら、その研究室に問い合わせてみるのもいいかもしれません。
そういった点では、毎年夏に活況となる、大学一般公開イベント「オープンキャンパス」は、直に大学に足を運んで質問できるいい機会です。希望校を夏までにある程度絞り込んでおけると、オープンキャンパスに向かう計画も立てやすくなります。
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将来の選択肢は2つ3つ考えておく
ある1つの大学や、1つのやりたいことにこだわったりするのではなく、選択肢は自分の中で幾つか持っておくといいです。なぜなら、希望の大学に受からなかった場合に途方に暮れてしまうからです。また、希望の大学に受かったとしても、それで終わりではありません。
大学に入ると、2~3年生のときに、さらに学科の中でコース分けが行われる場合があります。そして、4年生になると研究室配属が行われ、1つのテーマに絞って研究を行いますが、どの担当教授の研究室に入るかで、テーマは大きく変わります。
つまり、大学に入ってからも、さらに細かい進路分けが待っているのです。そのときの進路の分け方は、本人の希望も反映されますが、成績や人気度に対する定員などの条件もあるので、常に希望が通るわけではありません。
そういったときに、選択肢を幾つか持っておくと、気持ちも進路も早く切り替えができます。
希望通りに進学できなくても、就職活動で巻き返せる
難関大学に合格することは、社会でも認められる”箔”が付くことになるので、将来の就職活動に有利になることは間違いありません。実際に、学歴が高い=理解度が高く処理できる仕事の幅が広がるとの認識で、多くの企業では学歴を重視する採用は行われます。
ですが、難関大学に合格しなかったからといって、そこで人生終わりではありません。大事なのは、将来就職して、あるいは独立して、何をライフワーク(生業)として生きていくかではないでしょうか。
就職活動においては、あなたが大学で身に着けた能力、体験や経験、知識が重視されます。それは、大学の授業で学んだことに限りません。アルバイトやサークル活動だけにも限りません。SNSなどを通じて構築した純脈、自身で作り上げた製作物やコンテンツ、海外留学やインターン・ボランティアでの体験や気づきなど。そうやってあなたの中に蓄積された経験・知識やノウハウ、コミュニケーション能力などを売り込み、あなたが就職したい企業に生かせると認められれば、採用される可能性があります。
逆に、難関大学に受かったからといって、大学の間に勉強以外何もしなければ、採用する企業側としてはあなたが社会人として成長していける人か不安になります。
大学生の間に、あなたなりの独自の方法で、人生を巻き返すことは可能なのです。
大学院進学で、難関校に挑戦する
高校から大学受験時に、難関校に合格できなかったとしても、大学院進学時に難関校に挑戦するという手もあります。まずは、大学院について少し説明します。
大学院とは
(以下、修士はしゅうしと読みます。博士ははかせ、または、はくしと読みます)
大学院とは、大学で4年間学んだ学生の、その後の進学先です。大学院の課程は、「修士課程」または「博士課程(前期)」と呼ばれる2年間と、さらにそのあとの「博士課程」または「博士課程(後期)」と呼ばれる3年間の学校です。
課程の名称 | 課程の別名 | 通常在籍期間 | 入学受験の有無 | 受験資格 |
修士課程 | 博士課程 前期 | 2年 | 有 | 大学を卒業(見込み)であること |
博士課程 | 博士課程 後期 | 3年 | 有 | 修士課程を卒業(見込み)であること |
つまり、2年間のために受験をして合格したら入学、卒業。さらにその後の3年間のために、また受験して合格したら入学、卒業というイメージです。なお、一度修士課程に入学したら、博士課程の終わりまで在籍していなければならない、という訳ではありません。
2年間の修士卒後に就職してもまったく問題ありませんし、大手メーカーに就職する場合は、むしろ修士卒で新卒入社するのが一般的です。
修士課程の2年間を卒業した人は、「修士」や「修士卒」、「修士号」と呼ばれます。そのあとの3年間の博士課程を卒業した人は、「博士」、「博士号」と呼ばれます。工学部卒の場合は、「工学博士(こうがくはくし)」と呼ばれます。テレビなどのメディアで理系分野の専門家として「博士」と呼ばれ、見解をもらうために引っ張りだこになるのは、博士号を取得した方になります。
大学院で何を学ぶのか
大学院では、学ぶというよりも研究を行います。修士課程で研究の仕方を学び、博士課程では世の中にインパクトがある研究成果を創出することが求められます。どちらの修士と博士、どちらの課程でも、研究・論文の執筆・学会発表といったことに取り組み、卒業前には卒業論文の執筆と学内発表をすることで、卒業に必要な単位を取得します。
大学院に進学する理由は?
近年、工学系の大手企業では、設計や研究といった職種への新卒採用条件に、修士卒や博士卒を必要とする傾向があります。なぜなら、これらの職種はものづくりの肝になり、複雑なことを検討する力が必要なためです。その検討する力を有していることを、修士課程や博士課程を卒業する力を持っていることで見極めようとしているのです。
大学院は、同じ大学からのエスカレーター式なのか?
いいえ、一般的には、同じ大学の大学院に進学する場合でも、受験で試験や面接などを受けて合格することが必要です。また、4年間通った大学とは別の大学の大学院を受験することも自由にできます。
大学院での難関校への挑戦
そのため、高校から大学受験時に難関校に合格できなかったとしても、大学院進学時に難関校に挑戦するという方も多くいます。そうすると、その人の履歴書には、難関大学修士卒あるいは博士卒であることを最終学歴として書けるようになるのです。
難関大学に入学することのデメリット
難関大学に入学することは、メリットばかりではありません。
難関大学に入ると、学ぶ理論も高度になっていきます。一部の学生は、その学ぶ内容についていけず、単位を落として何度も留年といったことも、難関大学ではよくあります。あるいは、せっかく入学したのに、授業の難しさにあきらめて中退する方も稀にいます。
そのため、難関大学に受かったからといって気を抜かず、受かった後も勉強が必要になることは知っておいてください。
(人生は、大人になっても常に勉強だと、筆者は感じています。)
まとめ
この記事では、普通科高校の学生が理系分野を選択して以降、大学の工学部の道に進むとき・進んだ後の進路と、考えておくべきことについて解説しました。
難関大学に進学することは、確かに進路を考える上で重要ですが、それ以外の道も数多くあります。就職後の生活までを見据えて、様々な選択肢も持っておくことが大切です。
がんばれ。
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