核融合プラズマのコントロールには磁場が必要…その理由について解説
この記事では、人工的な核融合プラズマのコントロールには、磁場が必要となる理由について解説します。
1つ前のQ&A-3話の核融合とプラズマでは、プラズマが、気体より高温の「第4の状態」と説明しました。また、「人工的に核融合を起こそうとするならば、高温・高密度のプラズマを、長時間作り続ける必要がある。」ということを説明しました。
太陽が良例です。太陽は、水素とヘリウムの超高温巨大プラズマなのです。そして、その中心では、太陽自身の重力により圧力がかかるので、核融合が起きる条件がそろっているのです。
そして、このQ&A-4話では、「どうやって高温・高密度のプラズマをコントロールするか」について解説します。実は、タイトルで既に答えを出していますが、磁場を使います。なぜ、磁場を使って核融合プラズマをコントロールできるか、その解説です。
人工的な核融合プラズマをコントロールするための挑戦
1つ前のQ&A-3話では、「人工的に核融合を起そうとするならば、高温・高密度のプラズマを、長時間作り続ける必要がある。」と説明しました。これができれば、地球上に小さな太陽を作ったことになり、そこから大きなエネルギーが得られます。
問題は、核融合用の高温・高密度のプラズマを、どうやって長時間作り続けるか。
温度について言えば、人工核融合を起こすなら、実は、大体1億度以上の超高温プラズマが必要です。
そんな高温にするのも大変ですが、高温にできても今度は、周囲の物を溶かしてしまいます。
そのため、核融合プラズマは、周囲の物から浮かせて保たないといけません。
核融合プラズマを浮かせて、コントロールすることが重要
幸い、核融合プラズマは、気体のように空中に浮いてはくれます。
ただ、放置すると、あちこちに飛んで行ってしまいます。 そのため、核融合プラズマを周囲の物から浮かせるだけでなく、コントロールすることが重要なのです。
核融合プラズマのコントロールには、磁場が適切
核融合プラズマのコントロールには、磁場がとても役立ちます。
磁場とは、磁石が発生している、引き合ったり反発し合う、目には見えない力です。
なぜ、磁場を使ってプラズマをコントロールできるか。その理由は、プラズマが持つ性質によります。そのプラズマの性質と、磁場でどうやって核融合プラズマをコントロールするか、これ以降でお伝えします。
プラズマは電気的な性質を持つ
まずは、1つ前のQ&A-3話に続き、プラズマの性質をさらに解説します。
ここでお話することは、「プラズマは、+の電気とか-の電気といった、電気的な性質を持つ」というものです。
そのために、少し復習をします。
Q&A-2話「核融合反応の条件」では、陽子がいる原子核はプラスの電気を保有し、電子はマイナスの電気を保有することを紹介しました。
そして、Q&A-3話「核融合とプラズマ」では、プラズマ状態では、原子核と電子は離れて動くようになると説明しました。固体・液体・気体のときは、ひと組の原子核と電子はセットでずっとくっついているので、電気の性質はプラスマイナスゼロに打ち消しあいます。しかし、プラズマ状態になると、原子核と電子は離れて動くことから、次のようなことが起こります。
プラズマ状態になって、原子核と電子が離れている間は、原子核にはプラスの電気の性質が、電子にはマイナスの電気の性質が表れます。つまり、元々保有していたそれぞれの電気の性質が現れます。
「火・炎」もまたプラズマ状態の一種ですが、次の動画では、火の中のプラズマが電気の性質を持つことにより、電気の通り道になっている様子が分かります。
電離
このように、原子核と電子が離れると、原子核と電子それぞれが元々持っていた、電気的な性質が現れます。これを、電気が離れると書いて「電離(でんり)」と言います。
ですから、プラズマ状態にある物質は、電離している、電気的な性質があると言えます。
電気的な性質を持つとできること
Q&A-2話のおさらいになりますが、電気的な性質があるものでは、次のようなことが起こります。
先程の説明のようにプラズマも、電離していて電気的な性質があるので、次のことは起こります。
- プラスの電気同士は反発する
- マイナスの電気同士も反発する
- プラスとマイナスの電気は引き合う
そして、ここからは新しい話をします。それは、
「プラズマのように電気的な性質があるものの動きは、磁場を使ってコントロールできる。」
という話です。
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電気と磁場の関係
そもそも、電気と磁場には切っても切れない関係があります。
皆さんは小学生のとき、理科の授業でこんなことをやった覚えはありませんか?
銅線に乾電池をつないで電気を流し、その近くに方位磁針を近づけるのです。
すると、電線の周りでは、方位磁針の針の向きが変わります。これは、ちょうど下の図の様に、電流が流れる電線の周りには、円形の磁場が生じるためです。
このように、電流が流れるものは何でも、磁場を生じます。
(磁場は目に見えませんし、人間は弱い磁場を受けても感じません。なので、電気が流れるスマホや家電を使っていても普段気づきませんが。)
そして、磁場を出すものは、N極同士が反発・S極同士も反発・N極とS極は引き合うという原理がはたらきます。
つまり、ここで言いたかったのは、プラズマのように電気的な性質があるものは、磁場によって力を受けるということです。
プラズマは磁場を受けるとどう動くか
では、プラズマ状態での原子核と電子が、磁場を受けてそれぞれどう動くか説明します。
実は、ドラゴンボールの魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)!!という技のような、らせん状の動きをします。ピッコロの有名な技ですね。
え??と思うかもしれませんが、実際そうなのですよ☺
物理学では、このらせんの動きに名前があって、「サイクロトロン運動」と呼ばれます。
プラズマが磁場を受けたときのサイクロトロン運動
サイクロトロン運動について、もう少し詳しく説明します。下の図は、プラズマ状態での、原子核と電子のサイクロトロン運動の様子です。
図では、左右の両端に磁石のN極とS極が置かれている状況をイメージしています。NからSに向かって磁場ができます。
NからSに向かう磁場は目には見えませんが、図・絵で「磁場があるよ」という状況を矢印で表すことがあります。これを、「磁力線」といいます。
サイクロトロン運動では、原子核・電子は正にこの磁力線を中心にして巻き付くように、らせん状に動きます。
この、磁力線に巻き付いて動くような様子が、魔貫光殺砲に似ていますよね?
なお、原子核はプラスの電気を持っていて、電子はマイナスの電気を持っています。この電気の種類の違いのために、原子核と電子のサイクロトロン運動は、回転が逆になります。そのため、図を原子核と電子で別々にしました。
核融合プラズマのコントロールも、磁場によるサイクロトロン運動で
サイクロトロン運動を利用することで、磁場で核融合プラズマもコントロールできます。
つまり、サイクロトロン運動では磁力線を中心にプラズマ中の原子核と電子が動きます。そのため、磁力線の向きを変えて※あげれば、核融合プラズマをその方向に移動させるコントロールができます。
- 磁力線の向きを変える、とは、磁場の方向を変えることを意味します。
ただ、核融合プラズマのように超高温のプラズマをコントロールするには、とても強力な磁場が必要になります。
まとめ
◆核融合プラズマと磁場の関係 まとめ◆
- 原子核と電子が離れると、原子核と電子それぞれが元々持っていた、電気的な性質が現れる。これを、電離(でんり)という。
- プラズマ状態の原子核・電子は、磁場の中では、ドラゴンボールの魔貫光殺砲(まかんこうさっぽう)のような、らせんの動きをする。これを、「サイクロトロン運動」という。
- サイクロトロン運動の現象があるため、磁場を使うことで、プラズマ状態の原子核・電子の動きをコントロールすることができる。
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