今の原子力発電所は核分裂…核融合との違いを解説
この記事では、今すでにある原子力発電所(核分裂)と核融合の違い・共通点について、解説します。
実は、核融合炉は原子力発電所に種類分けされます。その理由は、核融合も原子力エネルギーを利用するためです。ただ、核融合の技術はまだ研究開発の段階です。2022年現在、核融合で実際に電気を作る原子力発電所を建設した国は、どこにもありません。
それでは、現在世界各地にある原子力発電所と、研究開発中の核融合炉の違いは何なのか。この疑問にお答えしたいと思います。
ズバリ、今の原子力発電所と、核融合の違いは?
先に答えをお伝えすると、今、既に存在する原子力発電所では、「核分裂反応」という現象が使われています。「核分裂」と「核融合」の違いがあるわけです。この核分裂について、もう少し詳しく説明していきます。
核融合と核分裂の違いは?
核融合については、Q&A-1でも紹介していますが、原子核と原子核がぶつかりくっついて、別の原子核ができることです。このときに、たった1グラム分の原子核が核融合反応を起こすと、石油数トン分のエネルギーが発生します。
では、核分裂とは何か。
核分裂は、ある1つの原子核が、2つの原子核に分裂する現象です。
実は核分裂も、核融合と同じくらいのエネルギーが発生する現象です。
核融合を起こしやすい原子
核融合を起こしやすいのは、今まで紹介してきた水素とその仲間(重水素・三重水素)です。
一般的に、元素周期表(すい・へー・りー・べーで覚えたあの表です)の上の方のほど、核融合を起こしやすい、軽い原子が多いです。
ここで、核融合を起こしやすいと言っているのは、核融合に必要な温度・密度が低くて済むことを言います。とは言っても、最低でも太陽の中心くらいの温度・密度が必要ですが…。
ただ、核融合を起こせるのは、普通は元素周期表の中でもFe:鉄の原子より上にある原子だけなんです。
核分裂を起こしやすい原子
逆に、核分裂を起こしやすく、原子力発電所に使われているのは、ウランという物質です。ウランの原子記号はUです。これは、海外の鉱山で採掘される、地球上に天然で存在する物質です。
ウランには、次の2種類が地球上にあるほとんどを占めています。
- 核分裂しやすいけどあまりたくさん採掘できないウラン235(つまり、激レアなウラン)
- 核分裂しにくいけどたくさん採掘できるウラン238
原子力発電所では、発電にちょうどいい分のエネルギーが取り出しやすくなるように、この2種類のウランの分量を調整して混ぜた燃料を使います。
ウランは元素周期表の中では、かなり下の方にある重たい原子になります。なお、ウランもまた、石油や石炭と同じように、限りある資源の1つであることに注意して下さい。
ウランの核分裂反応
現在世界で稼働している原子力発電所では、次のようなウラン235の核分裂反応から生じるエネルギーを利用しています。
- ウラン235の原子は、中性子1個にぶつかって来られると、核分裂をします。
- 核分裂すると、なんと、バリウム(Ba)原子とクリプトン(Kr)原子という2つの全然違う原子に分裂※します。
※ これは一例で、BaとKr以外に分裂することも多々あります。 - また、1グラムのウラン235が核分裂ときに、石油2000リットルほどの膨大なエネルギーと、新しい中性子も0〜3個生まれます。
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核分裂反応の連鎖と、原子力発電所での電気の作り方
1つ前の話の続きで、この新しく生まれた0〜3個の中性子は、原子力発電所の燃料の中では、今度は別のウラン235にぶつかります。すると、またそこで核分裂が起こる → また新しい中性子が生まれる → また別のウラン235で核分裂が起こる…といったように、連鎖反応が起こります。
この反応が連鎖すると、発生するエネルギーも連鎖で増えます。そのため、配合したウラン燃料を放っておくと、どんどんエネルギーが発生するのです。そこで、原子力発電所の中では、中性子が発生しすぎないように中性子の動きを邪魔する「制御棒」という装置を使って、エネルギーの量を調整する仕組みになっています。
原子力発電所では、このウラン235が起こす核分裂のエネルギーを、水に吸収させます。エネルギーを吸収した水は熱くなり沸騰して、蒸気が発生します。この蒸気を使って、発電機(タービンとも呼ばれる)という電気を作りだす機械を動かすのです。
原子力発電所の中では、爆弾の爆発は起きていない
なお、「原子力発電所の中では原子爆弾の爆発が起きている」と思われている方も時々おられますが、ここまでの説明で、爆発をさせているわけではないことは、分かって頂けたでしょうか。
また、現在の原子力発電所と、核融合炉の安全性の違いに関するお話は、次の記事で紹介しておりますので、興味のある方はこちらをどうぞ。
◆核融合と核分裂の違い まとめ◆
- 核分裂は、ある1つの原子核が、2つの原子核に分裂する現象
- 核分裂を起こしやすく、既存の原子力発電所に使われているのは、「ウラン」という物質
- 原発の中では、ウランの核分裂の連鎖反応から、膨大なエネルギーを得ている
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