核融合や核分裂といった「核反応」が、「化学反応」とどう違うのかを解説
この記事では、核融合や核分裂が、私たちが日常で見ている化学反応と何が違うのかについて解説します。
核融合と核分裂は、原子核がくっつくか分裂するかという違いはありますが、どちらの現象も「核反応」という現象に分類されます。
「核反応」は、私たちが小中高の理科実験で習う「化学反応」とは種類が違います。
一体、何が違うのか。この記事で解説していきたいと思います。
化学反応と核反応の違い
私たちは、火をつけたり薬品を混ぜたりして、熱を生み出す実験などを、小中高校の実験で経験してきています。エタノールランプに火を点けたり、何か物に火を付けて燃やすときに起こる現象は、「化学反応」の一種です。
小中高校の理科・化学で扱うのは、すべて「化学反応」の実験ですから、一般の方は「核反応」を、日常の中で間近に手元で見ることはありません。
両者を一言で説明すると、
- 化学反応では、「原子のチーム替え」が起きています。
- 一方、核反応では、「原子の改造」が起きています。
化学反応は「原子のチーム替え」
化学反応の例として、都市ガスでもあるメタンガスに火が点いて燃える化学反応を考えてみます。似たような例では、家のキッチンにガスコンロがあるご家庭や、小学校の理科室にあるガスバーナー、またはカセットコンロで、料理のために火を点けているとき。こういったときに、火の中でどんな化学反応が起きているかを、ここでは考えます。
メタンガスのメタンは、化学式で書くとCH4です。この化学式の通り、C原子さん1人とH原子さん4人のチームでできている、原子の集まりである「分子」となって、自然界で存在しています。このメタンに火が点いて燃えるとき、周囲の酸素の分子と化学反応を起こします。酸素は、O原子さん2人からなる、酸素分子O2のチームを作って、自然界で存在しています。
この酸素分子O2チーム✕2と、メタン分子CH4チーム✕1が化学反応を起こすと、熱が生じるとともに、チーム替えが起きます。
その結果、二酸化炭素の分子CO2チーム(:C原子さん1人とO原子さん2人のチーム)と、水の分子H2Oチーム(:H原子さん2人とO原子さん2人のチーム)✕2ができます。
化学反応(チーム替え)の前後で、人も人の数も変わらない
上の図を見てもらうと分かるように、化学反応の前後で、人や人数が変わらない=原子の種類や数が変わらないのが、化学反応の特徴です。つまり、ただ、チーム替えをするだけなのです。
核反応は「原子の改造」
次に核反応(核融合と核分裂)の話をします。これを原子=人に置き換えて説明しましょう。
核融合の場合
核融合反応が起こる前は、燃料の2H原子さん1人と3H原子さん1人が、それぞれ単独で居ます。そして核融合が起こると、この2人が合体して、新しくHe原子さんが生まれるのです。また、このときに中性子さんも1人生まれます。
つまり、核融合反応か起こると、反応の前とはまったく別人の原子さん(=まったく別の種類の原子)が生まれるのです。
核分裂の場合
核融合と核分裂の違いはQ&A-6でもお話しましたが、核分裂とは、1人の原子さんが2人以上の原子さんに別れる現象です。例えば、今の原子力発電所(核分裂炉)の燃料にはウランUが使われているので、これを人に置き換えて説明します。
一人のU原子さんは、中性子さん1人にぶつかって来られると、核分裂をします。そして、なんとBa原子さんとKr原子さんに分裂します。また、このときに中性子さんも0〜3人生まれます。
このように、核分裂反応でも、反応の前とはまったく別人の原子さんが生まれるのです。
核反応の前後で、別人が誕生する
ここまでの説明のように、核融合でも核分裂でも、「核反応」の前後で、まったく別の原子が生まれます。
一方で先程、「化学反応」の前後では、原子の種類や数は変わらないとお伝えしました。
言い換えれば、核反応は別の原子が生まれる反応であり、化学反応は原子の組み合わせだけが変わる反応なのです。
エネルギーの大きさの違い
ここまでで、核反応と化学反応の、反応の仕方の違いについて、分かって頂けたかと思います。
なお、また違う記事で説明したいと思いますが、核反応には化学反応の数万倍以上のエネルギーが得られるという事実があります。(どういうことを前提とした計算の仕方をするかで、何万、何十万、何百万倍になるかは異なります。)
そういう、得られるエネルギーの大きな違いがあるということは、知っていてください。
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◆核反応と化学反応の違い まとめ◆
- 化学反応の前後で、人や人数が変わらない=原子の種類や数が変わらない
- 核反応では、反応後に反応前と別の原子が生まれる
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