放射線のお話第2弾!放射線から身を守る方法や、単位も解説!
この記事は、前話の「放射線ってなに?なぜ危険?Q&A-19」の続き。放射線について解説します。この記事では、放射線から身を守る方法や、放射線の「単位」について解説します。
前話では、放射線とはそもそも何か、そして種類・危険な理由・人体への影響などについて解説しました。まだ読まれていない方は、先にこちらから読んで頂くとこの記事の理解もより深まります。そのため、まずは前話から読まれることをオススメします。前話へのリンクは、以下にありますので、こちらからどうぞ。
放射線の貫通力と、身を守る方法
ここではまず、放射線による被ばくをどのように防げばいいか、身を守るための3原則を紹介します。それを知るためにはまず、4種類ある放射線それぞれの「貫通力」の違いについて知る必要があります。それについて紹介します。
放射線の貫通力の違いと、防ぎ方
4種類の放射線の貫通力の違いを、この図を使って解説します。
放射線の種類 ➡ | α線 | β線 | γ線・X線 | 中性子線 |
---|---|---|---|---|
放射線の正体 ➡ | ヘリウムの原子核 | 電子 | 電磁波 | 中性子 |
貫通力 ➡ | 弱 | 中 | 強 | 最強 |
防ぎ方 ➡ | 紙1枚 | 薄い金属 (アルミホイル等) | 鉛や鉄の厚い板 | 特定物質: 水やコンクリート |
- アルファ線(α線)。これは高速で飛んでくるヘリウムの原子核の弾ですが、これは結構簡単に、紙1枚あれば止められます。
- ベータ線(β線)。これは高速の電子の弾ですが、アルミホイルのような薄い金属があれば止められます。
- ガンマ線(γ線)とエックス線(X線)。この電磁波の放射線は、鉛や鉄といった特定の物質の厚い板がないと止められません。
- 中性子線は、放射線の中でももっとも貫通力が強く、これまで紹介した紙やアルミホイル、金属板では不十分で、こちらも水やコンクリートという特定の物質で厚い層を作ることで止められます。
- 原子力発電所などの放射線が大量に出るところでは、その放射線が出る炉心の周囲を、厚いコンクリートの壁で覆っています。
遮へい物がないときの放射線の防ぎ方
このように放射線は、適切な遮蔽物を使えば防ぐことができます。しかし、遮蔽物がない場合はどうすればよいのか。
「放射線という見えないミクロな鉄砲に打たれて続けている」と意識をしてみてください。
そうすれば、「直ちに」「なるべく遠くに」「放射線の発生源から離れる」しかないと分かります。
すなわち、放射線から身を守るための三原則は、以下の①~③です。
- 放射線を出す物質などから距離を取ること
- 放射線が出ているところにいる時間を短くすること
- できるだけ厚い遮蔽物を使うこと
ただ、一般の方が放射線を大量に出す物質を扱うことは生涯ないとは思いますが、知識として知っておいてください。
放射線はどう発生する?
ここまで放射線のことを、「原子レベルの銃の弾丸のようなもの」と説明してきました。ではどのようなものが、「銃」になるのか。つまり、放射線はどうやって発生するのか。
原子核反応からの放射線発生
まず、このホームページでも解説している、「核融合」や「核分裂」といった、原子核で起こる反応のときに、放射線が発生します。
核融合と核分裂の違いについて知りたい方は、以下の動画「核融合と核分裂(原発)・化学反応の違い」で紹介しているので、そちらの動画を見てみてください。記事としては、以下のリンク先にあります。
一部の原子から放射線が発生する
また、一部の原子から放射線は打ち出されます。「一部の原子」とはより具体的には、次のような原子です。
- 原子核の陽子と中性子の合計数が100や200を超えてくる重たい原子
- 陽子と中性子の数がアンバランスで、不安定な原子の一部
このような「重たい原子」や「不安定な原子」の原子核は、放射線を放出して、「別の安定な原子」の原子核になろうとする性質があるのです。
このような現象を、放射性崩壊や、放射性壊変と言います。放射線を出しながら、原子が崩れたり壊れたりするという意味です。
また、このように放射線を出す原子を含む物質のことを、放射性物質といいます。
このように、放射線は、原子レベルの現象によって打ち出されるのです。
放射線と放射能のことばの違い
なお、放射性物質のように、放射線を出す銃になる「能力」があるものを、放射「能」があるといいます。放射線は弾丸、放射能は銃になる能力と、分けて覚えてください。
放射「線」は弾丸
放射「能」は、放射線を出す銃になる「能力」
放射線の強さとの関係
なお、原子核反応や放射性崩壊のときに出てくる
- 放射線の種類
- 放射線の数
- 放射線の強さ(つまり弾速)
は、どの原子核がどの原子核と核融合あるいは核分裂をするかや、どの原子が放射性崩壊を起こすかによって全然違います。
放射線の人工利用
ここまでの説明では、放射線は危険なものという印象を与えてしまったかもしれませんが、放射線は人々の生活にも役立てられています。
そもそも、人工的に放射線を作ることもあります。最も馴染みがあるのは、レントゲン。病院でレントゲンを撮影するために、エックス線発生装置を使って、人工的にエックス線を発生させています。
また、
メモ ガンマ線(γ線)とエックス線(X線)の違い
なお、ガンマ線とエックス線は、同じ電磁波の放射線を指します。
ただしガンマ線は、先ほど紹介した原子核反応や放射性崩壊などにより、原子核から発生する電磁波です。
一方、エックス線は原子核ではなくそれより外側で、何かの現象で発生する電磁波を指します。
また、ガン細胞を破壊するのにも放射線が使われます。
これらの放射線は、人体に悪影響がないように、速さや数を装置などで調整して使われています。
その他にも、この図のように様々な分野で放射線が利用されています。
放射線の単位
最後に、放射線の単位について、日ごろニュースで出てくる、Bq(ベクレル)、Gy(グレイ)、Sv(シーベルト) の3つについて解説します。
特に、最後のSv(シーベルト)が、私たちの健康影響を考える上で大切な単位なので、覚えてください。
Bq:ベクレル は、1秒間当たりの放射線の連射速度
まずBqと書いてベクレルですが、これは放射線という弾丸の「1秒間当たりの連射速度」になります。
強力な放射線だろうが、威力の弱い放射線だろうが、威力や種類は関係ありません。Bqはただ、「1秒間に何発の放射線が出るか」を表すのです。1万ベクレルなら、1秒に1万発の放射線が出ているよ、という意味です。
Gy:グレイ は、放射線を受けた物質が受け取ったエネルギーの大きさ
次に、Gyと書いてグレイですが、これは放射線の持つ弾丸のエネルギーが、放射線を受けた物質に入った量を、物質1キログラム当たりで表します。
1グレイは、1ジュール/キログラム というエネルギー量です。
ただ、これだけでは人体への影響が分かりづらい。そのため、人体への健康影響度を評価するときには、次に紹介するSv:シーベルトという単位が用いられます。ひとまず、グレイは放射線からどれくらいのエネルギーを受けたか。つまり、「どれくらい被ばくしたか」に関連する単位と思ってください。
Sv:シーベルトは、人体への健康影響度
そして最後に、Svと書いて、シーベルトを紹介します。このシーベルトが、一番よくニュースで見るかもしれません。
Sv:シーベルトは、人が放射線を受けたときに、どれくらい人体の健康に影響が出るかを表す単位です。
放射線は、4種類の種類によっても、また被ばくした人体の部位によっても、人体が受けるダメージが異なります。
そのため、「全身が均等に放射線を浴びた場合に整理し直した」被ばく量が、Sv:シーベルトです。
シーベルトの解釈は難しいですが、「受けた放射線の、健康への影響の大きさ」を表すと思ってください。放射線を全身でたくさん浴びてしまうほど、大きなシーベルト値となって、健康への影響が大きくなり危険です。
Sv:シーベルト値の危険基準は、100ミリシーベルト
では、どのくらいのシーベルト値を超えると危険かと言うと、例えば短時間で100 ミリシーベルトまでの放射線を受けても、発ガンのリスクは上がらないと言われています。
また、日本人は、1年365日を普通に日常生活すると、2 ミリシーベルトの放射線を宇宙から・地下から・食物から受けていると言われています。
1年で2ミリシーベルトだと、じゃあ50年で100ミリシーベルトになってしまう?いえ、そうではありません。非常に弱い放射線を長期間浴びても影響はありません。例えば50年間毎日、誰かに息を吹きかけられるても健康影響がないのと同じです。
しかし、100ミリシーベルトを短時間で被ばくするのは危険です。これは息を吹きかけるのと異なり、パンチを1発もらうような話なので、少し解釈が違うのです。
被ばく危険レベルのさらに詳しい話は、放射線に詳しいお医者さんに聞かないと判断が難しいです。ただ、数ミリシーベルトとか、その千分の1という小ささの数「マイクロシーベルト」の話であれば、健康にすぐ影響が出る話ではないと考えて大丈夫かと思います。
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身の回りの放射線被ばく量 早見図
最後に、私たちが日ごろ浴びている放射線が何シーベルトかが分かる早見図を紹介します。
人が年間で受ける放射線は何ミリシーベルトか、また病院などで放射線治療を受けるときにそれが一体何ミリシーベルトなのか、といった情報がまとめられた資料です。
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