ITER 世界中、エネルギーに困らぬ時代を創るために。
核融合は、仮説と挫折を繰り返す歴史だった。
「50年先の技術」と言われ続け、その50年が縮まらなかった。
それでも、研究者達は積み重ねた。
世界の核融合実験装置が、研究を進歩させた。
そして。
核融合を人類のエネルギーとして利用できることを実証するときがきた。
ITER。
その役割を全うする、2022年現在建設中の、核融合炉の名だ。
※ この背景の装置写真は、JETというITERと同じ「トカマク型装置」の炉心内部のものです。、
世界7極で最強チームを結成 ITER(イーター)プロジェクト
核融合炉ITER(イーター)に使われる機器には、これまでに製作経験のない巨大なものや、これまで以上に高い性能が出せるものが必要だ。
そこで、技術大国である世界7極が協力・分担して、世界同時並行で開発を進めている。
その7極とは、日本、EU、中国、インド、韓国、アメリカ、ロシアだ。
それらの機器を、フランス南部の建設地Saint-Paul-lez-Duranceに集めて、建設する。それが、ITER国際プロジェクトだ。
プラズマ温度、1億度。核融合燃焼時間、約400秒。
ITERでは、これまでにない大きさの人口太陽を作り上げる設計になっている。
そもそも、私たちが普段見ている太陽がなぜ輝き続けているのか。それは、内部での核融合反応により莫大なエネルギーを生み出し続けているからだ。
太陽は、ほぼ水素でできている核融合プラズマの塊だ。それに似た核融合プラズマを、ITERでは作り出す。
それは、リングの形をした人口太陽。研究の積み重ねが導いた形。「トカマク型核融合炉」と呼ばれている。
日本のITERへの貢献は大きい
ITERプロジェクトは、フランスだけで完結しない。
日本では、「Broader Approach(BA活動:幅広いアプローチ)」と呼ばれる、ITER連動型の研究開発プロジェクトが進行している。
その中でもITERに次ぐ規模のものが、JT-60SA(ジェーティーろくまるエスエー)だ。
JT-60SAは、量子科学技術研究開発機構(QST)の那珂核融合研究所に、2020年に建設されたばかりの、核融合向けの先進プラズマ実験装置。この装置の研究成果を共有し、ITERの実験を加速させるのが狙いだ。2022年現在は、プラズマ実験開始に向けた準備を進めている。
日本にJT-60SAの巨大プロジェクトが委託されたのは、文部科学省を中心に、日本がそれだけ核融合研究開発において世界を牽引しており、研究力の高さを評価されたためだ。BA活動では、JT-60SA以外にも様々なプロジェクトが、青森県六ヶ所村の「国際核融合エネルギー研究センター」で進行している。
ITER / ラテン語で、「道」という意味
ITERは、もともと「International Thermonuclear Experimental Reactor(国際熱核融合実験炉)」のイニシャルを取った略称であったが、今では「ITERという名前」の核融合炉という固有名詞に捉えられている。
そして、ITERにはラテン語で「道」という意味がある。人々の明るい未来を照らす 道 になって欲しいという願いが込められている。
ITERに関しては、研究開発・建設に関する多くの情報が、ITER機構ホームページやSNSを通して、全世界に無償で発信されている。核融合炉という原子力施設の建設情報の公開は、歴史的に見ても異例の試みだ。
少しでも多くの人に、核融合について知ってもらいたいというITER機構の狙いや願いがある。
その思想を当サイトでも引き継ぎ、大切にしたい。
このITERカテゴリーの記事では、設計・研究開発・製造まで、ITERの詳細に迫っていく予定だ。
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