フュージョンエネルギー基本法も提言!自民党が打ち出そうとしている政策とは?
この記事では、2024年5月14日に自民党の中で取りまとめられた、「フュージョンエネルギーを『国策』に」という提言書について解説します。
2023年およびそれ以降において、先進国での政策化競争が激しさを増す、フュージョンエネルギー(核融合発電)。日本でも、閣僚らや政党内での検討が最近加速してきています。
そのような中で、自由民主党党科学技術・イノベーション戦略調査会「フュージョンエネルギープロジェクトチーム」(平将明座長)は提言書を取りまとめ、2024年5月14日に自民党政調審議会で了承されました。これにより、この提言書は自民党の正式な政策提言となりました。
そこでこの記事では、その提言書「フュージョンエネルギーを『国策』に」について紹介したいと思います。
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自民党のフュージョンエネルギープロジェクトチームとは?
提言の前に、まずはこのフュージョンエネルギープロジェクトチーム(PT)について少し補足します。
このPTは、2024年2月に自民党内に発足したものであり、自由民主党の党科学技術・イノベーション戦略調査会(会長・大野敬太郎衆院議員)に設置されました。座長は平将明衆院議員であり、ここから政策提言の検討が始まりました。
そして、この記事でこれから解説する提言書の形となったということになります。
自民党の提言書の掲載Webサイトは?
この記事で紹介する提言書については、以下の自民党のホームページ上で公開されています。入手されたい方は、こちらからダウンロードしてください。
フュージョンエネルギーを『国策』に 提言の概要
まずはこの提言の概要について。平氏がX(旧Twitter)で解説されており、そちらを抜き出したものが以下になります。
◆ フュージョンエネルギーを『国策』に 提言の概要 ◆
- フュージョンエネルギーを「国策」として位置づけ、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を改定する
- 発電実証の目標時期を2030年代に前倒しし、加速された研究開発と実証計画の工程表を作成する
- 炉メーカーの輩出と国際標準化の推進、サプライチェーンの国際競争力強化を図る
- 米英中など他国に劣らぬ資金を確保し、トカマク型のみならず多様な型の事業間競争を促進する
- 国内外での安全規制の国際調和を推進する
- 開発促進に向けた資金支援の法改正なども検討し、JSTやNEDOの機能を強化する
- 文科省に加えて、府省庁連携の体制を構築し、フュージョンエネルギー基本法の制定も議論する
- 次期エネルギー基本計画において、フュージョンエネルギーの位置付けを高め、政府全体の支援と連携強化を明記する
また、既に平氏から解説YouTubeが以下の通り発信されておりますので、こちらもどうぞ。
提言の中の注目フュージョンエネルギー政策
ここからは、筆者が注目するこの提言の内容に焦点を当てて、解説したいと思います。
発電実証の目標時期を2030年代に前倒し
現行の「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」には、「原型炉研究開発ロードマップにおいては発電の実現時期を2050年頃」に見据えると書かれています。
これに対して、この提言では、米国や英国がさらに野心的な目標を掲げていることを指摘しています。
そして、「政府は、発電実証の目標時期を2030年代に前倒し」すること、「その目標時期に向けた必要な国の取組を含めた工程表を官民で作成」し、フュージョンエネルギー開発に関わる全ての企業等の予見可能性を高めるべきであると提言しています。
この提言に従って、もし発電実証の時期が2030年代に前倒しされれば、政策内容などを中心に、それに合わせて社会の様々な動きがガラッと変わってくることが予想されます。
フュージョンエネルギー基本法
この提言の中では「フュージョンエネルギー基本法」を制定することについても提言されています。
具体的な内容については触れられていませんが、その制定目的としては、府省庁連携型の体制構築と、更には産業界を巻き込んでいくためとしています。そして、科学技術(・イノベーション政策の観点のみならず、エネルギー政策、産業政策、経済安全保障政策、外交政策の観点から、所管官庁と連携することが必要と、この提言の中で書かれています。
このように法律化がなされると、法律には強制力がはたらくため、これまでの核融合開発の拠りどころとなっていた国家戦略以上に各省庁や産業界の動きが確実なものになります。
もし、この提言が通り、「フュージョンエネルギー基本法」を実際に制定することになれば、どのような内容になるのか。今後も自民党を中心とした動きに要注目です。
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