核融合って何?核融合と太陽について簡単に解説
この記事では、「核融合とは一体何なのか?」という、核融合の基本的なこと、太陽のことについて簡単に解説したいと思います。
「核融合」という言葉を、皆さんは耳にしたことがあるでしょうか?筆者は少なくとも、大学に入るまではこの言葉を知りませんでした。ですが、実は、地球上に住む人々は皆、いつも核融合と共に生きていると言っても過言ではありません。なぜなら、太陽が輝き続けるパワーの源こそが、核融合反応だからです。
また、最近では、政治家がエネルギー問題の解決方法について話をするときに、「核融合発電」という話が出てくることもあります。2021年の自民党総裁選では、立候補者の一人である高市早苗氏が、「小型核融合炉開発を国家プロジェクトとする」との持論を展開しました(以下、参考記事のリンク)。
この記事では、そんな「核融合」について、聞いたこともないという方々に向けて、簡単に説明したいと思います。
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そもそも、核融合とは?
まずは、核融合とはどういう現象かを紹介したいと思います。
核融合とは、「原子核と原子核がぶつかりくっついて、別の原子核ができること」です。
核融合 の核は、 原子核 の核のことです。また、くっつくことを「融合」とおいて、「核融合」と言われています。
原子核ってなんだっけ?
核融合をよく分かるために、原子や原子核のお話を、少しおさらいしましょう。
原子核とは、原子の中で、陽子と中性子が集まったところです。この原子の構成図では、原子の中心にある、ちょうど赤と青の点が集まっているところが原子核になります。
また、そもそも「原子」とは、「世の中のあらゆるもののを極限まで細かく切っていったときに残る最小の粒のようなもの」であることを、中学校で習ったと思います。
陽子の数が、原子の種類を決める
この原子核の中で、「陽子」の数が、原子の種類を決めます。
原子の種類とは、皆さんが中学校で習った、「すい へー りー べー …」の違いのことです。
「すい へー りー べー …」のうち、
「すい」は水素、「へー」はヘリウム、「リー」はリチウム、「べー」はベリリウムという原子の種類のことです。
そして次のように、原子核にある陽子の数の違いだけで、原子の種類が変わります。
- 水素 という種類の原子は、原子核に陽子が1個ある原子
- ヘリウム という種類の原子は、原子核に陽子が2個ある原子
- リチウム という種類の原子は、原子核に陽子が3個ある原子
- ベリリウム という種類の原子は、原子核に陽子が4個ある原子
中性子の数が変わると、同じ原子でも少し違う特徴を持つ
陽子のお話はしたので、次に中性子のお話をします。
中性子の数は、だいたいの原子で陽子と同じ数になることが多いですが、そうでない場合もあって、少し事情が複雑ですので、ここでは簡単に説明します。
原子の種類は陽子の数で決まるので、中性子の数が変わっても原子の種類は変わりません。
ただ、中性子の数が変わると、同じ原子の種類だけど、少し違う性質を持つ仲間の原子になります。
例えば、水素という種類の原子の場合、原子核に陽子は1個で決まっていますが、中性子については、0個、1個、2個ある仲間たちがいます。
地球上には、水素の中でも中性子0個の水素がほとんどで、少しだけ中性子1個の水素がいて、中性子2個の水素は全然いません。
陽子1個・中性子0個の水素は、そのまま「水素」と呼ばれます。
一方、陽子1個・中性子1個の水素は、「重水素」と呼ばれます。
そして、陽子1個・中性子2個の水素は、「三重水素」と呼ばれます。
どれも、水素の仲間です。
核融合すると、違う種類の原子ができる
核融合とは、「原子核と原子核がぶつかりくっついて、別の原子核ができること」と先ほど説明しましたが、重水素と三重水素の核融合の例が説明しやすいので、この例を基に具体的に説明したいと思います。
重水素(= 陽子1個/中性子1個)と、三重水素(= 陽子1個/中性子2個)の原子が核融合をすると、陽子が2個・中性子が2個の原子核ができます。このできた原子核は、上の図も再確認して頂くとわかりますが、ヘリウムのことを指します。また、核融合のとき、中性子1個も出ます。
つまり、重水素と三重水素が「核融合」すると、ヘリウム原子1個と中性子1個になるのです。
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どうして核融合が注目される?
実は、核融合するときに、莫大なエネルギーが生じることが分かっています。
どのくらいのエネルギーが出るかというと、1グラムの水素が核融合するとき、8トンの石油が燃えるときと同じくらいのエネルギーが発生します。
1グラムは1円玉と同じ重さで、8トンの石油はタンクローリー車1台に積まれる量ですから、少ない量でたくさんのエネルギーが出ることがわかりますね。
核融合はどこで起きてる?
核融合は、地球上の自然界では起きていません。ですから、地球上の私たちの日常生活の中で、核融合を見つけようと思っても見つけることができません。核融合は、地球上では複雑な条件や環境が整わないと、起こらないのです。その代わり、核融合の研究施設などでは、起こすことができます。ただ、とても大きな装置が必要なので、世界でも限られた研究施設でしかやっていません。
一方で、地球上ではなく宇宙に目を向けると、核融合を簡単に見つけることができます。それは、太陽です。太陽は、ずっと輝き続けていますが、なぜ輝き続けることができるのか?と子供の頃にでも思った方はいないでしょうか。私たちの日常では、火・炎は、燃やすものがなくなれば消えてしまいます。例えば、マッチでも、焚火やキャンプファイヤーでも、石油ストーブでも。
そのため、年中燃え続けている太陽のことを、不思議に思う人もいたでしょう。
太陽と核融合
先程説明したように、太陽の中では、核融合反応が起きているのです。
Wikipediaで太陽を調べると、次のようなことが書かれています。
- 太陽の大きさは、地球の約109倍。重さは、地球のなんと約33万倍。
- 太陽は、重さの約73%が水素で、約25%がヘリウムでできている。
この②のように、太陽はほぼ水素の塊です。そして、星の中心部で核融合を起こしているのです。
先ほど説明したように、核融合では、たった1グラムの水素からタンクローリー車1台分の石油と同じくらいのエネルギーが発生します。
太陽の場合、星全体が核融合の素なので、とてつもないエネルギーが生まれています。
太陽の中で起きている核融合は、水素同士の核融合です。しかし、先ほど説明した「重水素」と「三重水素」の核融合ではなく、少し異なる複雑な過程の核融合が起こっているので、それだけ注意して覚えていてください。
核融合発電とは
先ほど、核融合の研究施設の話を少ししました。この研究施設では主に、核融合を地球上で起こして、発電に利用するための研究が行われています。つまり、核融合発電所を作るための研究です。
ほとんどの核融合研究施設で研究されているのは、先ほど説明した「重水素」と「三重水素」の核融合についてです。核融合発電所を実現するために、「重水素」と「三重水素」の核融合が最も可能性が高いだろうという見立てが立っているからです。
現在は、まだ世界で1つも核融合発電所はありません。ですが、日本を含め、様々な先進国で、それを実現しようとする研究が行われています。
日本の研究
日本では、核融合の研究・実験のための大型施設として、JT-60SAや、LHDというものがあります。また、これら以外にも、多数の大学の施設などで、核融合の研究が行われています。
◆ 画像引用元 JT-60SA:
JT-60SA鳥瞰図 – 量子科学技術研究開発機構 (qst.go.jp)
ウェブブック – 2020_JT-60SA写真集 (qst.go.jp)
◆ 画像引用元 LHD:
大型ヘリカル装置計画 / 核融合科学研究所 (nifs.ac.jp)
国際協力プロジェクト
また、核融合発電の研究を、先進国による国際協力によって加速させようとするプロジェクトも行われています。これは、「ITER(イーター)プロジェクト」と呼ばれています。ITER計画とは、ITERと名付けられた核融合発電の実験・実証施設を、先進国が協力してフランスに建設し、実験を行うプロジェクトです。日本もこのITERプロジェクトに参画しています。
◆ 画像引用元 ITER:
核融合の勉強の参考になる動画
本記事で紹介したことは、英語ではありますが、以下のYoutubeで動画で解説されています。
これは、ITERプロジェクトを動かすフランスの本部「ITER機構(ITER Organization)」が作成したものです。英語ではありますが、この記事の内容を知っていれば、なんとなく分かります。視覚的に核融合や、核融合発電の研究施設について分かりやすい動画なので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
このサイトについて
このサイトでは、核融合の基本から、研究者しか知らないマニアックな技術まで、核融合に関する様々なことを、ITERプロジェクトに携わった経験がある元若手研究者が詳しく解説していきます。
徐々に新しい記事をアップロードしたいと思います。ぜひ、このサイトの様々なページを、サイトトップのメニューから見ていって下さい。
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