核融合は今の原発より安全?原理から解説[Q&A-11]

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先に 核融合Q&A-1~5 までを読んで頂くと、記事の理解が早まるのでオススメです

この記事では、核融合炉の安全性について、今の原子力発電所と比べてどう違うのかを解説します。

核融合炉と、既存の原子力発電所(核分裂炉)の違いは、「反応の違い」の観点から、既にQ&A-6話で解説しました。ただ、安全性に関する解説はまだできていなかったので、この記事で解説したいと思います。

目次
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核融合は、今の原発より安全性が高いと言われている?

将来の「核融合」発電炉は、今の原発の「核分裂炉」と比較して安全性が高いと言われています。

ただ、核融合が何を理由に、「安全性が今の原発より高い」というかは、皆さんには正しい理解をして頂きたいと思っています。

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安全性の違いは、核融合と核分裂の起こし方の違いにある

核融合炉と核分裂炉の大きな違いは、核反応の起こし方です。簡単に説明すると、これら2つの炉では、

  • 「核融合反応」は頑張って起こしてあげるのが大変。
  • 「核分裂反応」は放置しても起こる。

という大きな違いがあります。これにより、以下のような安全性の違いができます。

  • 「核融合反応」は、頑張らなければ起きないので、放置するとすぐに止まるという点で安全。
  • 「核分裂反応」は、放置すると起き続けるので、安全性を維持するためには、常に監視して調整したり、ストッパーをかけないといけない。

もちろん、核分裂炉(=現在の原子力発電所)でも、何か異常が見つかったときには核分裂反応のストッパーがかかっている状態になる仕組みになっているので、安全にできています。

ですが、核融合反応の場合は、「放置すると止まる」という仕組みになっているため、核分裂炉と比べるとさらに安全と言われるのです。

核融合反応は頑張らなければ起きない、とは?

「核融合反応は頑張らなければ起きない」とは、「核融合反応を起こすまでに、高温・高密度状態のプラズマを作るのが大変だ」ということです。

核融合反応の条件[Q&A-2話]の記事でも紹介していますが、太陽でも起きているような核融合反応を地球上で起こすには、太陽の中心部のような高温・高密度状態に、燃料プラズマを保つ必要があります。

トカマク型核融合炉のプラズマ

そもそも、その高温状態(約1億度以上)にするには、様々な加熱装置を使って、徐々に温度を上げていきます。が、このときにプラズマを壊さないようにしなければなりません。その核融合プラズマを作り上げるということは、大きなシャボン玉を割れないように保持するような繊細な作業です。例えば、トカマク型核融合炉では、上のショート動画のピンク色の部分のように、大きなドーナツの形をしたプラズマを作るのですが、プラズマは最初からふっくら丸みを帯びたきれいなドーナツの形をしているわけではありません。プラズマが壊れないように、少しずつ形をコントロールしてやっとこの形にします。そのコントロールの過程では、以下の図のように時間とともに少しずつプラズマの形を変えているのです。

以下の図は、日本のJT-60SAというトカマク型核融合実験装置における、過去に検討されたプラズマオペレーションの例です。図のピンク色の部分は、ドーナツの形をしたプラズマの1断面を表しています。一番初めのプラズマの状態が、画像中左上の(i) 0.9 sの時点(”s”は”秒”と同じ意味、実験開始からの時間)で、そこから(ii)5.7 sの時点、(iii)9.8 sの時点、…、実験終了フェーズでは最後に(viii)132.4 sの時点と、プラズマの形を変えさせていきます。

核融合プラズマの運転シナリオの例

画像引用元(に筆者で着色): プラズマ・核融合学会誌  第87 巻増刊2011年2月 「テキスト 核融合炉」p.53

このように、プラズマの形状や温度・密度などを適切にコントロールしなければ、約1億度の核融合プラズマに仕立て上げ、育て上げることはできないのです。もし、コントロールが途中で失敗すれば、プラズマはそこで崩壊します。

他にも、高温・高密度状態の核融合プラズマを作るのが大変という理由は多くありますが、他の記事で紹介していきたいと思います。ひとまず今の時点では、以下のような記事を読んで頂いて、「核融合反応は頑張らなければ起きない」ということを少しでも分かってもらえればと思います。

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核融合・核分裂の反応が起こるとなぜ、危険なのか

そもそも、核融合・核分裂の反応が起こると、なぜ危険なのか。それは、主に放射線の一種である「中性子線」が出るためです。

重水素と三重水素の核融合
ウラン235の核分裂反応の例
ウラン235の核分裂反応の例 引用元: (株)原子力安全システム研究所

この中性子線のおかげで、核融合炉は(核分裂炉でも中性子線がでますが、このおかげで)、水を沸騰するお湯に変えることができます。核融合反応・核分裂反応によって放出される中性子線には、それだけのエネルギーがあります。そして、沸騰するお湯は、電気を作る発電機を動かすことに使われます。

ただ、中性子線はそれ自体が非常に危険です。人が至近距離で中性子線を浴びると、死に至るおそれもあります。実際、過去にはJCO臨界事故という、作業者が至近距離で中性子線に被曝する事故もありました。

そのため、特に中性子線の発生については人の手で確実に調整できるように、核融合炉・核分裂炉は作られていなければなりません。

核分裂炉の仕組み

ここからは、核融合と核分裂炉の安全性の違いについてもう1歩踏み込んで理解できるように、核分裂炉(=現在の原子力発電所)の構造を説明します。

原子力発電所の仕組み
原子炉の構造 引用元:Wikipedia
原子炉の内部構造

浜岡原子力発電所の原子炉展示コーナーの大型模型 画像引用元:訪日.com

原子力発電の解説動画リンク
原子力発電のしくみ 解説動画 リンク先: 浜岡原子力発電所バーチャル見学会 ➤ 「原子力発電のしくみ」をクリック

核分裂炉の基本的な構造は、上の図のようになっています。

原子炉の中心部(炉心)は、ごく簡単に説明すると、次の要素構造でできています。

  • でかくて分厚い金属でできた圧力鍋(圧力容器と呼ぶ)
  • 中性子線を出す、ウラン配合の燃料(ウランや核分裂反応についてもう少し詳しく知りたい方は、Q&A-6話 今ある原発と核融合の違い をご覧下さい)
  • 制御棒

①圧力鍋の中に、②・③・④が入っているのです。

ウラン燃料集合体

③ウラン燃料は、1つの塊がドーンと入っているわけではなく、つまようじセットが置かれているようなイメージです。つまり、1本1本が細くて長ーい燃料棒がたくさん、縦に直立して集まっているのです。そして、1本1本の燃料棒の中には、「ペレット」と呼ばれる、大きさ約1cmのウラン粉末の塊が、約300個入っています。

以下の図のような燃料棒の収納ケースに燃料棒が200~300本挿入されますが、これを「燃料集合体」と言います。

なお、原子炉の中には、この燃料集合体が100~200体配置されます。

ウラン燃料集合体

燃料集合体・燃料棒・ウランのペレット 画像引用元: 原子燃料工業ホームページ

制御棒の役割

この③ウラン燃料集合体は、放っておくとどんどん中性子を出します。そこで、燃料の適切な位置に、中性子の動きを邪魔する壁の役割をする「④制御棒」という棒を配置します。この④制御棒を抜き差しして壁の位置を変え、中性子を邪魔する具合いを変えることで、中性子が出すぎないように量を調整する仕組みになっています。

ひとまず、原子力発電所の中では中性子は出ますが、爆弾の爆発が起きていないことはわかってもらえたでしょうか。

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核融合炉の構造は複雑

次に、核融合炉の構造を紹介したいのですが、核融合炉の構造は、核分裂炉と全く異なり、さらに非常に複雑です。そのため、核融合炉については、この「核融合の先生」サイト記事を色々と見てもらって、少しずつ理解していって下さい。

◆核融合は今の原発より安全? まとめ◆

核融合炉の安全性について、今の原子力発電所(=核分裂炉)との違いは次のとおり。

  1. 「核融合反応」は、頑張らなければ起きないので、放置するとすぐに止まるという点で安全。
  2. 「核分裂反応」は、放置すると起き続けるので、安全性を維持するためには、常に監視して調整したり、ストッパーをかけないといけない。

また、核融合炉は、放射性廃棄物の観点からも、核分裂炉と比較してメリットがあります。放射性廃棄物に関しては、以下の記事をどうぞ。

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