英国のSTEP核融合発電所とは?大注目の兆円規模PJ(2025年7月

STEP核融合
画像引用元: https://step.ukaea.uk/about/
  • URLをコピーしました!

(当サイトにはPR広告が含まれます)

先に 核融合Q&A-1~5 までを読んで頂くと、記事の理解が早まるのでオススメです

英国が0.5兆円の予算化を決定!「STEP」は世界が注目する核融合発電所建設プロジェクト

この記事では、英国が2025年6月におよそ0.5兆円の予算化を決定した、球状トカマク型核融合炉の建設プロジェクト「STEP」について解説します。

英国政府が主導して進めるこの核融合研究開発プロジェクトは、一国家としてはこれまでに類を見ない規模の予算が核融合へ認められたことから、核融合業界内では世界中で大きなニュースとして取り上げられました。

このプロジェクトは今後英国国内で進められていくものですが、日本の企業もこれから参入する余地がありますし、現に参入している企業はいくつかあります。このように予算規模が大きいものですから、この記事を手始めにSTEPプロジェクトについて知って頂き、企業の方々には参入機会を探って頂ければと思います。

なお、そもそも核融合発電の産業化が進んでいることをまだ知らない方へ。業界人ですら予想もしなかった速さで、それは進んでいます。核融合業界の中で今、何が起きているのか。1から知る必要がある方は、まず管理人著書のこちらの書籍「フュージョンエネルギーに備えよ」を読んでみてください。

目次
核融合発電ワールド 出展レポート

「STEP」核融合プロジェクトの概要

まずは、この「STEP」という核融合炉建設プロジェクトの概要について紹介します。

そもそも、このSTEPは「Spherical Tokamak for Energy Production」の略です。Spherical Tokamakは日本語で「球状トカマク型(の核融合炉)」です。また、Energy Productionはエネルギー生成という意味ですね。

STEPプロジェクトの概要については、以下のWebサイトで紹介されています。

STEP核融合炉プロジェクトのフェーズ
画像引用元:https://step.ukaea.uk/what-is-step/ 

STEPプロジェクトとは何か:  https://step.ukaea.uk/what-is-step/

このサイトによると、STEPプロジェクトについて以下のように説明されています。

The first of its kind, STEP is the UK’s major technology and infrastructure programme to build a prototype fusion powerplant that will demonstrate net energy, fuel self-sufficiency and a viable route to plant maintenance. 

(訳)STEPは、純エネルギー生産、燃料の自給自足、そしてプラントのメンテナンスへの実行可能なルートを実証するプロトタイプの核融合発電所を建設するための、英国初の大規模な技術・インフラ計画です。

つまり、STEPプロジェクトはイギリス政府が主導する、球状トカマク型の核融合発電所のプロトタイプを建設する計画です。

実験炉、原型炉、実証炉、商用炉の分類の中では、原型炉もしくは実証炉に相当するでしょう。
(実験炉や原型炉の違いについては、以下の記事を参考にしてください。)

STEPプロジェクトの大まかなフェーズ分け

上記で紹介したサイトによると、STEPプロジェクトの状況と今後の進行は、以下の各フェーズのように検討されています。

STEPプロジェクトの各フェーズ

  • Phase 1(既に終了): 2024年までの第1フェーズでは、概念設計、主要な技術・インフラプログラムを実現するための組織体制の構築用地選定、そして英国が世界をリードしている適切な規制枠組みの整備に注力してきました。
    現在、発電所の概念設計は完成しており、主要システムの設計方針を概観しています。用地はノッティンガムシャー州ウェストバートンを選定しました。現在は、ウェストバートンにおけるサイト特性評価作業に注力しています。
  • Phase 2: 第2フェーズでは、主要産業を巻き込んで、クリティカルとなる技術の開発をプログラムし、設計、実証します。そしてコンポーネントの製造へと移行します。
    また、ウェストバートンの地方自治体の協力パートナーや周辺地域と緊密に連携し、計画承認と許可の取得を目指します。
  • Phase 3: 第3フェーズは、発電所の建設とインフラ整備に関するもので、計画許可と同意が得られ次第、2030年代に開始されます。このSTEPプロトタイプ発電所は2040年に最初の運転を開始し、可能な限り早期に少なくとも100MWの正味のエネルギーを実証する予定です。

球状トカマクとは

球状トカマク型核融合炉とは、この「核融合の先生」サイト内でも最も解説記事が多いトカマク型」と呼ばれるタイプを、さらにコンパクトにした先進的なコンセプトです。先進的なコンセプトであるため、球状トカマク型の研究開発の進展は世界的に見ても、一般的なトカマク型と比較すると一歩遅いところはあります。

しかし、コンパクトな型で核融合発電炉を成立させることができれば建設費を抑えられ、経済性の観点で他の核融合炉よりも有利になります。そのためこのSTEPプロジェクトを始め、欧米のスタートアップや日本でも、コンパクトなトカマク型核融合炉により発電実証を目指すプロジェクトが幾つか進んでいます。そして同時に、このコンセプトを成立させるために必要な「高温超伝導体」と呼ばれる先進的な超伝導線材を利用したコイルの開発も進んでいます。

なお、この記事では、STEPの「プロジェクト概要」に焦点を当てて解説します。球状トカマク型の「技術側面」について興味がある方は、以下の記事を参考にしてください。

STEP核融合炉の建設地は?

上述のとおり、STEPを建設する場所はノッティンガムシャー州ウェストバートンに既に決定しているようで、以下のマップに示しました。

かつて石炭火力発電所があり、その跡地を利用します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次